普通自動車免許の本試験を受けて疲れてしまった話

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こんこん
主婦です。歯科衛生士をしながら時々ブログを書いています。

地方の引っ越しを機に私は自動車学校に通うことにしたのだが、先日ついに普通自動車免許を取得した。試験は水戸の運転免許センターまで行くようにと指示を受けたのだが、そこがまた辺鄙なところで最寄り駅から1日1本出発している朝7時のバスに揺られていけば1時間半、そのほかは3時間近くかけてバスと電車を駆使して目指さなければならないということであった。さらに試験を受けて免許が発行されるのに夕方までかかるので全ての過程にほぼ1日を費やすとの説明を聞き、仮免許試験に一度落ちてしまった私は「絶対に落ちるもんか」と割と早い段階から決意を固めたのだった。

試験までの一ヶ月、私はほぼ毎日早起きをして子供が寝ている時間に満点さま(アプリ)の模擬試験問題95問を解いていた。どうしても時間が取れない時は満点さまの一問一答問題を解いて、そうやって毎日勉強をした。家族友人知人誰も自動車学校の試験勉強に時間を費やしたという話を聞いたことがなかったので「自動車免許のためにこんなに勉強を頑張らなくてもいいのでは?」との思いが過ぎったが、そんな時はきまって仮免許試験で自分だけ番号が表示されなかったあの日、体の冷えを心配して膝掛けまで持参したのに仮免許試験に落ちてしまったあの時を思い出して気持ちを立て直したのであった。

試験当日。この日は生憎の雨で朝から気分が重かった。前日に駅までのタクシーの予約をしたところ「タクシーは朝の7時からの予約なんです」と断られたため駅まで30分に1本走っているバスに乗っていくことにした。やはり交通の便で都会に勝るものはないようだ。

運転免許センターまで直通の1日1本のバスにも問題なく間に合い、観光バスのような大きなバスに乗車した。出発した数十分後、ちょっとでも楽しい気分になるようにと前日に買っておいたベーグルとランチパックのピーナッツ味とアーモンドミルクをリュックサックから取り出して朝ご飯にした。遠足のような気持ちになり気分が良かった。モデルが美味しいと言っていたのでアーモンドミルクを初めて買ったのだが、その時は結局飲まなかったのでおやつにとリュックサックに再びしまい込んだ。バスは土浦駅を越えて高速道路を目指して走行している。横目で見た車窓からは色味のない寂れた街並みが覗かれた。

 渋滞に巻き込まれることもなくバスは予定よりも早く運転免許センターに到着した。案内されたカウンターで試験の手続きを済まし、試験会場の教室に移動した。席に着くと教官らしき男性が「試験までに時間があるので皆さんゆっくりしていていください」とマイクでアナウンスした。まさかこのアナウンスをその後10回近く聞くとは思わずのんびりした気持ちでいたのだが、だんだん長時間の移動と教室の固い椅子のせいで尻が痛み出した。この待ち時間無駄だなと思いながら尻の痛みに耐えていると試験はだいたい10時から始まる予定ですとアナウンスが流れた。この時、8時45分くらいで尻が痛くて待ち時間に勉強する気にもなれず、試験と関係のない本を読んだりツイッターをして時間を潰した。

 結局10時を過ぎても「まだ受付をしている人がいるので」という理由で試験は開始されなかった。遅れてくる奴のことなど閉め出せと苛立ちこんな密室で大人数を長時間待たすなんてどうなってんだよと腹を立て、私の心の夜叉は終始怒り狂っていた。その後回答用紙が配られ教官の指示で名前や受験番号を記入し、テストが開始されたのは結局11時頃であった。

一ヶ月の満点さまの効果で私は順調に回答欄を埋めることができた。当たり前ではあるが、問題の傾向性を把握して繰り返し解いていれば何も難しいことはないのだ。50分の試験時間が終わり、回答用紙が回収されると合格発表は30分後に下の階にあるロビーの掲示板に表示されるとアナウンスが入り教室から出された。

やっと尻が解放された。尻が痺れて変な歩き方をしながら1階のロビーに向かった。ロビーに到着しても座りたいと思えず突っ立って合格発表を待った。不意に公然でストレッチなどをし待機していると、そういえばアーモンドミルクを取っておいたということを思い出し、リュックサックからコソコソ取り出しストローをさした。所作はおっさん心はモデル。アーモンドミルクは薄い汁にアーモンドが浸したような味わいで、ここ最近飲んだ汁物の中で1番まずかった。これは某企業に責任があるのか私がアーモンドミルクの味そのものが苦手なのかわからないが、このアーモンドミルクは私はダメだった。個人的にはもっと濃厚な味わいを期待していたのだが、モデルが一体どんな味のアーモンドミルクを飲んだのかとても気になっている。

そうこうしているうちに合格発表の時間になり、電光掲示板の前に人だかりができた。自信はあったがかなりドキドキして掲示板を見つめていた。 もうこんな辺鄙なところには2度と来たくない。時間の贅沢使い。尻の拷問。様々な感情を抱えながら発表を待っているとパッと番号が点灯し、自分の受験番号が表示された。合格だ!

あたりからは「わー」という歓声が溢れ、掲示板にスマートフォンを向けて皆が写真を撮り始めた。自動車免許の本試験がこんなに盛り上がりを見せるものだったとは知らず、嬉しくなって歓喜の瞬間を私も記念に収めておいた。

合格発表後は合格者だけがまた会場に戻り、免許取得までの流れの説明を受け適応検査が行われた。合格発表が終わってからはもう昼飯のことしか考えておらず、休憩になったら近くの食堂に行くぞとGoogleマップで食堂を調べていた。

待ちに待った休憩の時間。みんなも絶対食堂に行きたいと思っているに違いないと思ったので雨の中小走りで食堂を目指した。ところが食堂を目指していそうな受験生は1人しかおらず、食堂に入ると客はおじさん、私、あとは私の後ろに座っていた先ほどの受験生の3人しか店にはいなかった。受験生数百人はみんな一体昼に何を食べようと思っているのか、みんな秘境のようなこの場所の食堂に行きたいと思わないのかと疑問に思いながら私はカレーそばを注文した。

カレーそばがまさかそばにカレーをかけた料理だとは思わず、一瞬時が止まったような感覚に陥った。もっと濃厚なつゆにそばが絡んでる料理をイメージしていたのだが、私はちょっと考えが濃厚に偏っているのかもしれないなと改めた。

ところがブツブツ言いながらもいざ実食してみたろこと、カレーそばの美味しさに驚いたのであった。まずカレーの味が美味しい。学校の給食のような懐かしい味わいで非常に美味しい。そして豚肉が細切れではなく贅沢にブロック肉を使用しているので、食べ応えがあって満足感がある。こりゃ素直にカレーライスにしておくべきだったなとの思いも過ぎったが、このあっさりしたつゆとカレーが混ざっていくといい塩梅になって良かった。食べ終わっても残った汁がうまく汁がうまいと思いながらカレー汁をすすっていた。

「美味しかったです」と言いながら食器を返すと「嬉しいわ」と言ってニコニコしながら厨房のおばあさんが答えてくれた。Googleの評価では「免許センターに来る人だけがターゲットの店。店主は客より偉そうで驚くほど横柄」と投稿していた人がいたが少なくとも厨房で働く従業員の2人は温厚な接客で、カレーの優しく懐かしい味わいに彼女らの人柄が現れていると私はここに記したい。

食堂ひきたや

ありがとうございましたの声を聞きながら店を出て、再び免許センターに戻った。皆が予定の時刻に席に着席していると事務員らしき女性が3名教室へと入ってきた。免許作成のための集金をすると言い、金額を提示された。事前にお釣りのないようにと午前中に言われていたので、指定された金額をきっちり揃えて机の横に皆が置いた。そのお金を洗濯カゴのようなカゴを片手に事務員達が手際よく回収していった。洗濯カゴで集金していく様子が斬新で、集金したお金がどのように収まっているのか気になり観察していると、なにか箱のようなもので細かく仕切られていて小銭と札が丁寧に仕分けされていた。

集金が終わった後はやけに勢いのある女性が登壇し、まず携帯電話は速やかに鞄にしまうようにと言われた。素直に鞄の中にしまうと、先ほどの集金の女性達が手際よく入会申込書とパンフレットを配布していった。私の机の上にもその二組が並び、情報量の多いパンフレットに視線を移した。

カエルのようなゾウのような生き物、カエルのようなゾウのような生き物がプリントされた蛍光黄色のランドセルカバー、交通事故ゼロの文字、ガソリン代やドリンク代が割引になる特典、チャイルドシート貸し出し、安全傘の配布、二輪車フェスティバル、交通事故の見舞金、横断歩道渡り方指導…ぎっしり詰まった情報量と迫りくるデザインに呆気にとられていると「これは任意ですが」と最初に前置きした後に、勢いのある登壇者がパンフレットに書いてある「交通安全協会」の内容を読み上げていった。

これはなんだろうか?と怯えながら説明を聞いた。内容の読み上げが終わった後、会員になるには本日年会費の5年分を支払うというちょっとよくわからない支払を請求されることにシンプルに嫌だよと思い、私は教室に佇む石となった(初めて免許を取得した場合は3年更新のため3年分の1500円らしい)まだ入会もしていないし、よくわかってもいない団体なのに5年分の入会費の請求はおかしいと私は思う。小学校の頃にやる交通安全教室は警察官によるものだと思っていたが、あれは交通安全協会が主催していたものなのだろうか。警察官であれば税金で運営されているわけだろうが、この団体は民間なのか?一体なんなんだ。

冒頭で携帯電話は鞄にしまうようにとの指示があったので、私は鞄の中にスマートフォンを忍ばせたまま交通安全協会についてすばやく検索をした。すると検索ワードに「天下り」の文言が並んだためやっぱりもっと調べてから決めようと決意し、再び石となった。

自分の意思が固まっても、周りのことがつい気になってしまう小心者なのでみんなどうするのかとキョロキョロと辺りを見回していたところ周囲の若人は何も臆することなく申し込み用紙に記入をして数年分の年会費の準備をはじめた。皆警察菅が監督している運転免許センターでの申し立てだから素直に同意してはないだろうか。「任意って言ってましたよ!」心の中で皆に呼びかけた。せめても同じ食堂で昼食をとった仲である後ろの青年に「任意って言ってましたよ!」と言いながら「天下り」とカンペを出したい気持ちであった。

そうしてまた事務の女性達により洗濯カゴに会費と申込用紙が回収されていった。私のところにやってきた女性が無記入の用紙を見て私の前で動きを停止させたので「あのもうちょっと考えてから決めさせていただきたいと思うのですが」と告げたところ、数秒の間の後「はぁい」と言って無記入の申し込み用紙を回収して去っていった。私はあの数秒の間の中で「非国民」と唱えて去っていったと予想している。

その後洗濯かごを持った女性達は退出していき、男性教官が入ってきて免許作成のために必要な視力検査と写真撮影の説明を受け実施し、16時前ごろに完成した免許を受け取った。出来上がった免許証には疲れ果てて顔色が浅黒く目が細くなってしまった私の姿が写っていた。

そして帰りはタクシー、バス、電車とあらゆる交通手段を使い3時間ほどかけて自宅に帰宅したのであった。

※ちなみに冒頭の問題の答えはバツです(交差点ではなくこの先横断歩道ありの標示)

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