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こんにちはこんこんです。先日ベトナムのホーチミンに家族旅行に行きまして、もちろん一人で現地の歯医者にも行ってきましたのでご報告致します。
熱心な読者の皆様には説明不要と存じますが、私は各国の歯科医院を受診するのが趣味でして、以前の記事でも海外歯科訪問記を発表させていただきました。(前回の記事)
今回はその続編ということになりまして、2017年に訪れたホーチミンにあるやくり歯科で担当していただいた有賀先生がなんとホーチミンでご開業されており、これは一つご挨拶をと熱い気持ちを抱いてクリニックの予約を致しました。
予約は方法はとっても簡単でした。LINEでありが歯科を友達追加をすると日本語で案内が届き、希望の時間と内容を送信すると「ご予約承りました。」と受信。
そして無事に当日を迎え、約束の16時半に遅れないようホテルからGrab(配車サービスアプリ)タクシーに乗ってありが歯科まで向かいました。
到着しタクシーから降りると、ベトナム人であろうおじさんがニコニコしながらありが歯科を指差し案内してくれました。
階段を登り扉を開けると若いベトナム人男性が受付で「こんにちは」と出迎えてくれました。
「16時半に予約したこんこんです」
「ではこちらをご記入ください」
と流暢な日本語で手渡されたのはこちらの問診票。
日本語なので迷うことはないはずの問診票ですが、いくつか手が止まった項目がありました。
まず「ご職業」
私は現役歯科衛生士なのですが、同業あるあるだと思うのですが同業者にできることなら同業とバレたくはない…(以前、有賀先生にお会いした時は自信が歯科衛生士と名乗ったのですが)
飛ばしましょうということでここはとりあえず空欄にしました。
次に「当院を選んだ理由」
ありが歯科ご開業を祝いに….
怪しすぎる、飛ばしましょうということでこの二点を空欄にして男性に問診票を提出しました。
男性に問診票を手渡すとその問診票は女性に手渡され、女性は私の名前を呼んだ後診療室に案内してくれました。女性は日本の20代後半か30代前半くらいの歯科衛生士さんでした。
ユニット(診察台)に横になると、有賀先生がやってきてクリーニングのご希望ですね、何か気になることありますか?等さらっと確認されたあとに診察が始まり、「特に問題なさそうなので歯科衛生士がクリーニングします。値段は160万ドンです(日本円で9700円くらい)。」と治療前にはっきりと金額を伝えた後、先生は去って行かれました。
あ、先生行ってしまわれた。と思っていると、歯科衛生士さんが「赤くお口の中を染めてもいいですか?」と尋ねてきました。染め出しやるの?!?抜き打ちで染め出しをする…もっとも歯科衛生士がされて嫌なことを…と思いながらも「はい、お願いします」とニコニコ答えました。
*染め出しとは歯に付着する歯垢に赤などの色素をつけて磨き残しをわかりやすくする方法です
染め出し液を歯に塗布した後にゆすぐよう促されます。口をゆすぐと絶妙なタイミングで「ティッシュをどうぞ」とおそらくベトナム人の女性が折り畳まれたティッシュを手渡してくれました。
「こんこんさんは普段何を使ってお手入れされていますか?」
「普通の歯ブラシと電動歯ブラシとフロスを使っています」(ドヤ顔)
「すばらしい!!!でもこんこんさん、この右上は左に比べて歯ブラシが当たっていないかもしれません」
「あああああああああ」(心の叫び)
そんな日本でよくみる光景をとっても物腰の優しい歯科衛生士さんにご指導いただきながら歯磨き指導していただきました。
一通り指導が終わると超音波スケーラー(超音波の振動でプラークや歯石を取り除く機械。お水を出しながら行います)で上下の歯を清掃してくれました。
そうして再び「お口をおゆすぎください」と衛生士さんに促されて口をゆすぐと、絶妙なタイミングで「ティッシュをどうぞ」と丁寧に折り畳まれたティッシュが手渡されました。ちなみに口を拭いたティッシュは「受け取ります」とティッシュを渡してくれた女性に回収されていきます。
次はスケーラー(歯石や歯垢を取り除くための刃先のついた器具)で歯と歯の間を清掃した後に、再び「口をおゆすぎください」と促されました。再び口をゆすいでいると「ティッシュをどうぞ」の声がかかり、ていねいなティッシュが眼下に表れました。
ふぅ..と一呼吸を置いてユニットに横になると「磨いていきますね」と回転ブラシで歯面の清掃をしてくれました。横目で使っている研磨剤を確認したところ薄緑のペーストが確認されました。おそらくあの色であの粘度はあのメーカーのやつだな…ありが歯科では日本技術を提供するだけでなくできる限り使う道具や材料も日本の歯科医院が使用している物を採用するようにしていることが見受けられました。ちなみにありが歯科では日本の歯科医院でも取り扱いの多い(GCやサンスターなど)ホームケア用品があり、受付にディスプレイされていました。
おそらく日本のあの会社のあの研磨剤で上下の歯を一通り磨いてもらった後「口をおゆすぎ下さい」とまた促され口をゆすぎました。
「ティッシュをどうぞ」
どうもありがとうございます。
「最後仕上げに磨いていきますね!」
最後はラバーカップで歯面を磨いていただきました。(ラバーカップで磨くと歯面がより滑沢になり着色もしにくくなると言われています)
「おつかれさまでした」
の歯科衛生士さんの声でユニットの椅子が起され口をゆすぎました。
「ティッシュをどうぞ」
とティッシュが手渡されました。
おそらくティッシュを渡してくれる方はティッシュ係というわけではなく、見学も兼ねているように見受けられました。ありが歯科ではベトナム人スタッフが日本の歯科医療システムや言語などを現場で学んでおり、できることを頑張ってやりたいと言う気持ちがこの丁寧なティッシュの手渡しに表れているのかなと思います。
最後に歯磨き指導で使った歯ブラシが手渡され(Ciメディカルの自社ブランドの歯ブラシ)あ、Ciと思ったのですが、日本から仕入れてるんだよな。今は円安だからコストはかからないのかな…というか材料屋さんってベトナムにはいるのかな(日本では定期的に歯科医院に専門業者の人が受注や納品にやってくる)などと思いながら待合室に向かいました。
さて、施術が完了し待合室にやってきた私はこう思いました。
歯科衛生士さんにさらっと渡して帰るのがよいだろうか….でも有賀先生に言いたい。先生、私またホーチミンの歯医者にやってきたよって言いたい…
とりあえず受付にいた男性に「有賀先生今患者さん対応していますか、お忙しくなければお話したいのですが…」と声をかけていると「あ、ちょっと待っててください」とたまたま受付にやってきた歯科衛生士さんが先生を呼びに行ってくれました。
どうしました?という感じで受付までわざわざおいでになった先生に
「あの私やくり歯科でも先生にお世話になったことがありまして、先生がホーチミンでご開業されたこと知ってこちらにも伺いたいと思って今回やって来ました」
と緊張しながら話しました。
「はぁ」
「それでこれお菓子なんですけど…よかったら皆さんで召し上がってください」
「はぁ…ありがとうございます」
「………。」(私)
「………。」(有賀先生)
「………。」(受付にいた男性と歯科衛生士さん)
ちょっと待って、みんな引いてる?
全員無言で静まり返る待合室で、私は重大な問いを投げかけました。
「あの、先生私のこと覚えていますか」
「いや、覚えていません」
「………。」(受付の男性と歯科衛生士さん)
「やくり歯科って6、7年前ですよね」
「はい!」
「うーん、覚えていませんね…」
「………。」(全員)
そう言った後、先生は菓子折りを持って立ち去っていきました。
「………。」
この空気やばいなと思ったかどうか知りませんが
「以前まではホーチミンにお住まいだったんですか?」
と変な空気に巻き込まれてしまった歯科衛生士さんが優しく声をかけてくれました。
私はこの時、なんかどうでも良い気分になり
「実は私歯科衛生士で海外旅行に行くと好奇心でその土地の歯医者に行っていて、それで以前やくり歯科に行って先生のお世話になったんですよね」
と素性を明かしました。
すると
「えーーーーー歯科衛生士さんだったんですか!すみません普通にTBI(歯磨き指導)しちゃって」
と申し訳なさそうな顔をされていました。(やっぱり同業がやってくるって嫌ですよね。)
「あぁ良いんです、磨き残しも把握できましたし。ところで待合室って写真撮っても大丈夫ですか?」
と尋ねると
「あ、ちょっと待っててくださいね」
と言って席を外されました。
そうして戻ってきた歯科衛生士さんは
「写真撮って大丈夫です、先生に歯科衛生士の方だったみたいですよと言ったら思い出した!って言ってました」
とニコニコと答えてくれました。
「本当ですかね….」
よかったです!と素直に言えばいいものを不穏な返答をし、パシャパシャと数枚写真を撮らせてもらった後お会計をして帰りました。
今回先生にはお話を聞けなかったのですが、少し歯科衛生士さんとはお話ができ、1年ほど前からこちらで働き始めたと聞かせていただきました。
基本的に日本の歯科衛生士免許では国外で歯科衛生士の仕事をするということができないことが多く、アメリカやオーストラリアで歯科衛生士として働く場合はその国で認められた歯科衛生士免許を取得する必要があります。ベトナムの場合は歯科衛生士という職がなく、歯科領域に特化した看護師が歯科衛生士のような仕事をしているそうです。しかし日本の歯科医師の指導のもとで日本人に特化した医療を提供する場合は、日本の歯科衛生士としてホーチミンで暮らしながら免許を活かして仕事をすることが可能だということがわかりました。(このようなスタイルが全ての国で通用するかはわかりません)
ちなみにハノイにも日本の歯科衛生士免許で邦人特化型歯科医院で活躍している歯科衛生士さんがいらっしゃる様子。きちんと技術を身につけていけばこれから国外で働く選択もできるかもしれないと勇気づけられました。
感想
今回ホーチミンのありが歯科を受診して思ったことは
1、LINEで予約が取れるありがたさ
2、もっと治療費を取ってもいいと思う
3、普通に考えて7年前に1回会った人のことは覚えていない
ということでした。
1、LINEで予約が取れるありがたさ
LINEで予約を取れるようにしたことは素晴らしいなと思いました。昨年マニラに行った時に日本人が経営している歯科医院を受診しようとしたのですが、ホームページが英語だったため英文でcontactのページから予約希望日を送ったのですが一向に返信が返ってこず、ネットの口コミを見たところ電話しか繋がらないと書いてあったので他のアメリカ人医師が経営する歯科医院に予約を変えたという経緯がありました(マニラ旅行中に子供が具合が悪くなり残念ながら行けなかったのですが)
日本語で予約が取れて日本語でさっと返信がくるというのは快適でさらに※日本人の8割が使っていると言われる馴染みあるLINEで取れるというのは強みだと思います。※ドコモモバイル会社研究所より引用
これは利用者側の利点だけでなく、受付に日本語スキルの高い人材を置かなくてもいいという経営の利点もあると思います。慣れない言語での電話ってめちゃくちゃ難しいし、さらに歯科医療の予約を取るってなかなか難しいのですよ…。治療内容によって治療時間が違かったり、患者によっても同じ内容で時間のかかる人とそうでない人がいたりするので、逆に予約の調整が複雑だからこそ日本の歯科医院でのネットの予約化がなかなか進まないということはあると思います。
2、もっと治療費を取ってもいいと思う
今回4、50分かけてクリーニングの施術を受けて日本円で9700円くらいの費用だったわけなのですが、安い!これだけ徹底して異国で日本となんら変わりない医療が提供できるということは日本人としては本当に安心できることで、この空間を提供しているだけでもそこに価値が大有りだと私は思います。9700円って一見日本の歯医者よりも高く感じますが、日本では保険適応で3割負担なので大体3000円くらい。つまり大体1万円くらいで皆さんも歯のクリーニングを受けているのです。
ベトナムにいながら予約はスムーズ、言語は通じる、日本で使っている製品を使ってくれる(研磨剤とか)水は浄化されており滅菌制度が整っている(ホームページに記載されています)
ベトナムでは水道水を飲むことができないので、私はベトナムでは歯を磨いて口をゆすぐ時もペットボトルの水を使って口をゆすぐのですが、そういった環境で歯科治療をする時にどんな水を使っているのかわからないというのは言語が通じないのと同レベルで不安です。
様々な不安要素を抱えた中でも安心して受診できるありが歯科は強く推せる存在です。クリーニング料しかわからないので何とも言えませんが、他の治療の料金も日本で受ける歯科治療の料金と変わりないようにしているのではないかと思います。(もっと取ってもいいよ!)
3、普通に考えて7年前に1回会った人のことは覚えていない
ノーヒントで「覚えていますか」と言われてもそりゃ覚えていないよなと反省しました。
ただ最初から歯科衛生士と名乗っていたら担当する歯科衛生士さんには心労をかけたと思うので、言わなくてよかったと思います。一応7年を経て遥々やってきたことが伝わった様子だったので個人的にはこれでよかったです。
以上今回のレポートでした。改めましてありが歯科ご開業おめでとうございます!
最後の歯科受診から半年経ったな〜という方はこの記事を機に是非歯医者に足を運んでみましょう!