さとみこんこんWORLD DENTAL MEMORIES(趣味で海外の歯医者を巡った記録)

シェアする

The following two tabs change content below.
こんこん
主婦です。歯科衛生士をしながら時々ブログを書いています。

編集部注:
本記事は、さとみこんこんメンバーが趣味で海外に行くたびに歯科医院の受診体験をしていたものをまとめた記録です。






2017年8月12日 タケノコ診療所(インドネシア)

初めて海外の歯科医院を体験したのはタケノコ診療所であった。インドネシアのスディルマンに開設されたタケノコ診療所の周辺には日系企業も多く存在し、日本人の患者も安心して受診できるように配慮されている。この医院を訪れることになった経緯もジャカルタに住む日本人の友人がオススメしてくれたからであった。

10年以上も日本の歯科医院に勤務し、歯医者に行くことなど生活の一部に過ぎない私でも海外の歯科医院を受診するというのは緊張するものであった。しかしそんな緊張をタケノコ診療所の看板が和らげてくれたのだった。

眼鏡をかけた優しそうな表情のタケノコ

緊張が少しほぐれたところで建物の中に入ってみると、日本の歯医者ではまず見かけないタイプの縦看板が鎮座しており圧倒された。

頼もしさも感じられる

恐る恐る受付に向かうとインドネシアのスタッフに日本語で挨拶をされ、日本語表記の問診表を渡された。待合室で待っている男性もおそらく日本人だ。

神々しい受付
茶色を基調とした診療室はインドネシアの雰囲気を醸し出している

何も難しいことも緊張する必要もなく事が進み、そうしてそのまま診療室へと案内された。

診療室に通されると恰幅の良い先生と英語で喋っているおじいさん先生が現れ一気に緊張のボルテージはあがった。

立派な肩幅が印象的なお二人

異国の歯医者にやってきてしまった。好奇心と少しばかりの恐怖とで揺れ動く私に、恰幅の良い男性が「お座りください」と日本語で声をかけてくれた。言われるままにユニットに腰をかけた私は驚いた。なんとユニット(治療用の椅子)はOSADAであった。オサダだ..日本の歯科機器メーカーのOSADAだ。「華やかじゃないけどあなた良い顔をしているから」と言って患者のおばあさんが歯の治療中に縁談を持ちかけてくれた相手あれは確かにオサダだった。歯科機器メーカーのOSADAの社長と言っていた。え?私で良いんですか?と前のめりにおばあさんに返答したものの、やっぱり自分は社長夫人なんて器じゃないよなと真剣に悩んで後日お断りしたのだが、あの日あの時のOSADAのユニットがインドネシアの診療所で採用されていました。私が社長夫人としてもしかしたら広報とかしていたかもしれない OSADAのユニットはここインドネシアで活躍しておりました。人生には振り返るともしもあの時という瞬間がありますが、私は墓に収まる時にはこのことを思い出すでしょう。もしも私がOSADAだったら…..

OSADAのサイドテーブル

OSADAのユニットに安らかに収まった私の体は「たおれます」の男性の声でゆっくりと傾いていった。診療はおじいさん先生のDr.Ronyが担当してくれ、やけにガタイの良い男性はアシスタントをしてくれた。

まずDr.Ronyは私の口内をぐるっと見回したあと、親指をたてて無言でサムズアップしてくれた。マスクで口元は見えないが、西部警察を彷彿とさせるDr.Ronyの眼鏡の下は確かに微笑んでいた。言葉が通じなくても身振りや表情で相手を安心させることができることがわかり嬉しい気持ちになった。

全体のチェックが終わったあとDr.Ronyは今回の目的である歯のクリーニングに取り掛かってくれた。コントラアングル(クリーニング用の回転ブラシ)ではなく超音波スケーラ(超音波の振動と水流で歯石などをとる道具)をいきなり歯面にあて豪快に茶渋を落としてくれた。ちなみに私の口の中は細菌学的な見方をしても細菌数が少なく清潔な口腔内であるとここに記したい。ムシ歯もなければ歯石もついていないと断言しよう。たいして茶渋もついていないので超音波スケーラーを使わなくてもコントラアングルで十分クリーニングできるし、そのほうが歯面を傷つけなくて済むと考える。しかしDr.Ronyはギュインギュインいわせながら超音波の刃先を歯面に当てていき、ものすごい振動と衝撃を私に与えた。私の口内で西部警察が始まったのだ。

診療の様子

安らかに収まっていたOSADAのユニットから声をあげながら飛び上がった。ガタイの良い先生にどうしました?と声をかけられDr.Ronyはこちらをじっと見つめていた。どうしようかと思ったが思っていることは伝えた方が良いだろうと思い「あの、振動が強くてびっくりして…」とおどおど伝えると、OSADAの椅子は再び倒れていった。なんのフォローもなく何事もなかったかのようにまた私のお口の中で西部警察が始まった。鮮血が飛び散ることはなくとも水流が飛び散り顔中がびちゃびちゃであった。そんな時はアシスタントの恰幅の良い彼が丁寧に水飛沫をタオルで拭いてくれたのであった。見た目によらずアシスタントの彼の対応や所作は丁寧であった。

辛い超音波スケーラの施術のあとはコントラアングルで歯面を磨いてくれた。クリーニングの時間はだいたい20分くらいであろうか。OSADAの椅子が起き上がり、口をゆすいだ後にDr.Ronyから手鏡が手渡された。歯の裏側まで綺麗になっており、私はこちらインドネシアはタケノコ診療所にて白い歯を手に入れることができたのだった。

クリーニングの費用は初診料なども含めて約6000円程度。日本で自費のクリーニングを受けるよりも少し安いくらいの金額であった。

施術は日本の歯のクリーニングと然程違いはなかったけれど、もっと日本の歯科衛生士さんの方が丁寧かと思う。少なくとも私はもっと優しく丁寧だ。クリーニングの施術は西部警察さながらであったが、Dr.Ronyはとても気さくな先生で、私が歯科衛生士であることを告げるとニコニコしながら自分の名刺を手渡して微笑んでくれた。治療の腕のほどは不明ではあるが、先生のお人柄とユニットは信頼できる「タケノコ診療所」。インドネシアで歯のお困りがあった際は訪れてみてはいかがだろうか。

タケノコ診療所





2017年12月30日 やくり歯科(ベトナム)

ベトナムはホーチミンのサイゴン旧市街の中心部にあるやくり歯科を訪れた。

西洋と東洋の文化が入り混じるホーチミンの街並みでやくり歯科は明らかに東洋の外観である。

やくり歯科はホームページも日本語、医師も日本人ということで言葉の問題はまずなさそうであった。予約をとる時はフェイスブックから日本語でやりとりをしてクリーニングの予約を入れた。

当日は予約時間よりも30分も早く到着してしまい、どうしようかと建物の周りでオロオロしていた。すると「どうしました?」と建物からベトナム人の若い男性がでてきて日本語で声をかけてくれた。事情を説明したところ「大丈夫ですよ!早くご案内できたらしますね」と優しく声をかけ、中に案内してくれた。待合室は少し狭いが清潔感があり、キッズルームも完備されていた。

受付の様子
壁紙の可愛いキッズルーム。ガチャガチャや絵本も置いてある。
問診票も安心の日本語

日本語の問診票を記入した数分後。予約時間よりも少し早く先ほどの彼に案内され診療室へと向かった。建物の中は思っていたよりも広く、診療室まではエレベーターを使って移動した。エレベーターの中で少し彼と雑談をした。親切な彼は歯学生で、勉強中の身であることがわかった。歯学部で勉強をし日本語も堪能。その上心配りもでき人当たりも良い。まぶしい。特に人生に意気込みもなく海外で歯医者めぐりをして楽しんでいる中年にはこの志高い若人が眩しすぎたのであった。

持ち手が目になっているロッカー。
ありそうでないデザインだ。

診察室に入ると日本人医師の有賀先生が「何をしにきたんですか…」と若干戸惑った様子で出迎えてくれた。自身は歯科衛生士で観光でベトナムにやってきて、観光で歯医者にきたことを説明すると「何も変わらないよ…」とお答えになった。何も変わらない。先生、それが素晴らしいじゃないですか、異国に行ってもここやくり歯科では日本と同等の治療が受けられる。その事実がワンダフルと私は心の中で呟いた。ちなみに有賀先生は日本での診療経験もあり、日本の学会やスタディーグループにも参加されていたそうでそんな話を聞かせていただいた。

歯のクリーニングの感想は本当に日本と何も変わらなかった。コントラアングルでの歯面研磨、隣接面の細かいところは超音波スケーラにて清掃をしたあとに、以前事故で欠けてしまいコンポジットレジンで修復した前歯の段差まで有賀先生は滑らかに研磨してくださった。

時間はだいたい20分くらいだろうか。何事もなく快適に処置は終了。クリーニング費用は約8000円程であった。診察は非常に安心できたが、日本人が見ていることへの気まずさから診療室の写真を1枚も撮らずに終了した。しかし有賀先生は診療後もベトナムの歯科事情のお話を聞かせてくださった。ベトナム人の歯の意識は高いそうで特に若者の矯正率は高いとのこと。ちなみにベトナムの矯正費用はだいたい10万円くらいが相場らしい。「東南アジアは矯正する子が多いよね。みんなファッション感覚だよね。タイの女の子は自分でブラケットを付けてワイヤーを通して矯正するらしいよ」と有賀先生はおっしゃていた。恐ろしいし度胸がすごい。信じられないので真相を確かめるためにタイに飛びましょう。

診察が終わり会計を済ませていると、有賀先生は見送りのためにわざわざお顔を出してくれた。受付のお姉さんと案内をしてくれた親切な若者、そして有賀先生はベトナムのおすすめのスポットや美味しいご飯屋さんなどを教えてくれたあと「明日から休みだから仕事が終わったら3人で焼肉食べに行くんだよねー!」とめっちゃくちゃ楽しそうに言いながら私のことを見送ってくれた。

私もなんらかの事情でベトナムで暮らすことになった時はやくり歯科に雇ってもらい、有賀先生に焼肉をおごってもらおう。そう思いながらやくり歯科を後にした。

※その後有賀先生はホーチミンで開業したようです

やくり歯科

ありが歯科





2018年 8月13日 バンコクスマイルデンタル(タイ)

新婚旅行であったタイ旅行で訪れたのはプーケットでもピピ島でもサムイ島でもなくバンコクスマイルデンタルだ。個人行動枠を設けて1人で歯医者にやってきたのである。

ここバンコクスマイルデンタルは世界に拠点を構える「マロ・クリニック」とパートナーシップを結ぶ東南アジアでは唯一のクリニックだ。ちなみに「マロ・クリニック」は本店がリスボンにあり日本には銀座に支店がある。そんなグローバルな歯科医院を今回訪れたのだが、やはり世界に拠点がある歯医者は違うなと感心することが多かった。まず予約の取り方。ホームページのお問い合わせから日本語で「歯のクリーニング希望」とメールを送信すると、予約完了メールが届き予約の前日には予約の確認と内容、地図が添付され送られてきた。日本ではEPARKなどネット予約を代行してくれる会社を通さないと歯科医院でインターネット予約ができるところは少ない。そしてもっと驚いたのが、問診票の記入がパソコン入力であることだった。

パソコンで問診票を入力をする患者の様子
問診票の入力は英語であった

日本では直接パソコンに必要事項を入力する歯科医院は少ない(自分は体験したことがない)受付の人が後からパソコン入力をすることを考えると患者に直接入力してもらった方が効率が良いし、紙の節約にもなるしエコだ。医療のデジタル化が進んでほしいと願う。あと個人的には早く歯肉縁下歯石除去(歯茎に覆われて見えないところの歯石を取ること)の自動化が進んでほしい。基本、歯科衛生士さんは手指感覚を頼りに歯石を探して取るのだけど、あんな神業みたいなことは早くデジタル化され、簡単に迅速に安全に治療ができるようになってほしい。

受付の様子

問診入力後はパソコンに取り付けられた小型カメラを向けられ、突然撮影をされた。そしてその数分後、受付の女性からカルテを案内があるまで待っているよう指示を受けた。カルテには先ほど撮影した小型カメラにビビる私の顔写真が添付されていた。

待合室の様子

 しばらくカルテを手に待っていると、受付の女性に案内をされ診療室に向かった。流暢な日本後で私を案内してくれる受付の女性は東京理科大学に留学経験もある才女であった。来院してからずっとバンコクスマイルデンタルのスペックの高さに感動と驚きで胸をときめかせる私であったが、診療室の扉を開けるとさらに驚かされたのであった。私を出迎えてくれたのは若い女医さんと見たこともないようなボロいユニットであった。よく見るとペットボトルが内蔵されており先ほどまでの洗練された印象と随分かけ離れたユニットの姿に呆然とし、やがてジリジリと不安が襲ってきたのであった。

初めて目にするタイプのユニット

しかしそんな不安を若い女医さんは「HI!」の一声と見事なスマイルラインで打ち消してくれた。東京理科大に留学経験のある受付さんにペットボトル内蔵型のユニットに座るよう指示され、素敵な女医さんが歯のチェックをしてくれた。

「右上の奥は歯茎が少し下がっていて物が挟まりやすくなっています。フロスをしっかりかけてくださいね。左上のCR(白い詰め物)は古くなって変色しています。最近レントゲンは撮りましたか?」先生の診察内容を受付の才女が日本語で説明をしてくれた。日本でも予防的な観点でアドバイスをしてくれる歯科医師は少ないので丁寧に診断してくれていると好印象であった。

その後も素敵な女医さんに丁寧に超音波スケーラーとコントラアングルで歯面清掃をしていただき、30分程度でクリーニングは終了した。今回の費用は日本円で3700円と今までで一番安い費用だった。

日本語が話せる彼女は診療中もずっとそばで付き添いをしてくれ、とても安心できる環境であった。診療後、タイの歯科事情を先生に質問したいと彼女にお願いしたところ心よく承諾してくれたので色々と質問をさせていただいた。

●教えてタイの先生

Q, タイには歯科衛生士さんはいないのですか?

A,いません。タイではまだ歯を予防するという意識が低く、歯医者さんは痛くなったらくるところという認識がされています。

Q,タイでは歯医者さんになるのに何年間勉強しますか?

A,6年間です(日本と一緒)

Q,タイではコンビニやドラックストアでフロスを良く見かけますが、フロスは習慣として浸透していると思いますか?

A,うーん…フロスをする習慣のある人は少ないと思いますが、私はフロスをすべきだと思います。例えばパンとパンの間にジャムがサンドされているとします。そのパンに水をかけます。パンを開いた時にサンドされたジャムはまだ残っていますよね?そういうことです。

Q,タイでは若い女性たちが歯の矯正をしている姿をよく見かけます。タイでは矯正する人が多いですか?

A,多いですね。若者たちの間では「矯正器具を装着している口元が可愛い」という認識があります。

Q,タイの女の子たちが矯正装置を購入して自分でブラケット装着して矯正すると聞きました。それは本当ですか。そして先生はその現状についてどうお考えですか?

A,クリニックで矯正をすることがほとんどだと思いますが、自分で矯正する人もいることは事実です。良くないと思っています。歯のアーチが歪んでしまったりすることもありますから。

とのことだった。本当に自分で矯正する人がいる事実に大変驚いた。

歯は綺麗に並んでいるから良いというわけではなく、歯が咀嚼するために機能していることが大切で、綺麗に並んでいるからよく噛めるというわけではないのだ。一見綺麗に見えても構造的におかしな歯並びは崩壊する。つまりどこかに支障が現れ、歯を失うリスクが高まるのだ。なので良い矯正の歯医者を探す場合は見た目だけではなく機能的なことまで考慮して治療してくれる歯科医でないと、せっかくお金をかけて矯正しても虫歯や歯周病などかえって病気を引き起こしやすい状態になることもあるので注意が必要だ。矯正だけではなく、歯の被せ物一つで機能のバランスを崩してしまうこともあるのでなるべく歯を削ったり冠せたりして歯を傷つけずに済むよう、歯ブラシやフロスをしてきちんと病気にならないよう予防をすべきなのだ。

みなさん歯は大事ですよ

歯は一生物。どうぞご自分の歯を大切に。

私の願いは国民が歯の価値と健康意識を持って予防に取り組み、削減された医療費がもっと違う使われ方をされてほしいということです。

バンコクスマイルデンタル

スポンサーリンク

シェアする

フォローする