葬儀屋さんの「終活」が斜め上すぎてビックリしたから潜入してきた

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金原みわ
あっちこっちに精力的に顔を出す男根崇拝トラベラー。珍しいものがあればなんでもヤル!でも処女です。

今回我々が取材させていただいたのは「葬儀場のイベント」です。普段つい目を背けてしまう「死」を扱う葬儀場は、想像以上に緩くて楽しい場所でした。


※本記事はリブセンス社のオウンドメディア「ドアラジオ」閉鎖に伴い、許諾を得た上で再掲したものです。



ある日、とある葬儀場の前を通りかかった際こんな看板を見つけたことが、今回の取材のきっかけとなりました。

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▲葬儀場×マジックショー?!

なんでしょうこれは。
私の貧相な想像力を持って思いつくことといえば、

「亡くなった人が、ビックリして生き返っちゃった〜〜〜〜〜〜〜!」

と禁断のネタを繰り広げるマジシャンの姿と、まさにお葬式のような雰囲気になる会場という、死屍累々の光景しか浮かんできません。(そしてその後ネットで大炎上。葬儀場だけに)

残念ながらこのイベントに参加は出来ませんでした。ですが、誰がどういった経緯でこのエッジの利いたイベントを開催することになったのか。モヤモヤする気持ちをずっと抱えながら日々を過ごしていました。


そんな中、また新たな看板が出ていたのです。
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▲葬儀場×フラワーアレンジメント…!

菊とか蓮とか曼珠沙華とかをアレンジするんでしょうか。仏花や榊に表現の自由はあるのでしょうか。さぞ、しめやかに執り行われるのでしょう。全くの未知の世界です。

ということで、早速取材のお願いをしたところ快く承諾をいただくことができ、今回この気になる葬儀場へ潜入し密着取材することになりました。いや〜楽しめるかどうか分かりませんが、楽しみです!



家族葬ホールに潜入取材!


このイベントが開催されるのは、家族葬ホール「千の風」になります。
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この「千の風」という名前も気になるところです。ホールの目の前に立つと、どうしても“あの曲”が頭の中をよぎってしまうのは私だけでしょうか…。
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▲「あの曲」
さて、今回はここ千の風伊丹店のご好意により、まずは葬儀場についてのお話を聞かせていただこうと思います。

こちら、千の風 兵庫エリア課長の植田さんです。商売道具の数珠がキラリと光るダンディ課長です。
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●本日はよろしくお願いいたします。

植田さん「こちらこそ、よろしくお願いします」



家族葬葬儀場の実際

●千の風さんって、どういった施設なんですか?


植田さん「千の風は全国展開している葬儀屋です。特に、千の風伊丹は家族葬メインの斎場になります」


●あー、最近家族葬って良く聞きますね。基本的なことですが、どんなものなんですか?


植田さん「家族葬と言っても実はその定義はありません。お葬式というのは、最初は自宅で行うものが一般的でしたが、その後時代とともにホールでお葬式を行うようになっていきました。そして更にここ10年で、少人数の家族や親しい友人だけで見送りたいという流れが都心部から生まれ、そこに“家族葬”という名前が定着していったのです」

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ほほう、家族葬って、そんなに新しい言葉だったのですね。確かに核家族化している日本において、そこまで仰々しいものでなくても良いという方は今後も増えていくと思います。

※ここで来客応対の為に、植田さんから辰巳ディレクターに代わってお話を伺います。


●そもそも葬儀の基本的な流れってどのような感じなんでしょうか?


辰巳さん「通常故人が搬送されてきた場合、まずはこちらを使っていただきます」
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▲辰巳ディレクターがホール内をご案内
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辰巳さん「法律で定められている24時間のご安置が終わりましたら、納棺として隣室の祭壇に移動させていただきます。その間、ご家族の方に付き添っていただきながら、お通夜をしたり、お食事をとっていただいたり…故人と最後の時間をゆっくりと過ごしていただくことになります」
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▲靴を脱いで上がる「家」スタイル
家族葬で近しい人が付きそうということもあり、内装は殆ど家と変わらないようなものとなっているそうです。

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▲風呂、トイレ付き

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▲仮眠の為の布団もある

大切な家族と過ごす最後の時間、やることも多く体力的にも精神的にも消耗するので、リラックスして過ごしたいですよね。

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▲キッチン家電も完備。普通に住めますね。

●ちなみに…お葬式ってどれぐらいの金額なんですか?


辰巳さん「式場を貸し切る基本料金に、供花やお食事などのグレードを変えて行く形になります。結婚式と同じように考えて貰うと分かりやすいですね。千の風では、皆さん総額で100万〜150万くらいでしょうか」


結婚式と同じようにというのが不思議な感じもしますが、冠婚葬祭どれも人生には大事なこと。死は一生に一度のことですから、こだわりたい気持ちも分かる気がします。

本題のイベントの話へ

葬儀の話はこの辺りで置いておいて、気になるイベント話を聞かせてもらいます。

●今までどんなイベントを開催したのですか?

辰巳さん「そうですね…結構色んなことに挑戦してきました。

例えば、”歌声喫茶”。講師を呼んで皆で合唱したのですが、私がギター演奏したんですよ。」

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▲祭壇をバックに、エアギターを奏でる辰巳ディレクター。

●凄いですね!

なんか…なんか…ロックです!

●そういえば私が千の風さんを知ったのは、マジックショーのイベントだったんですが…あれってどうでした?

その、色々と大丈夫でした?(笑)

辰巳さん「ああ、マジックショー!ありがたいことに、大変好評でしたね。大盛り上がりでした」

●そ、そうなんですか…!

辰巳さん「“お宝鑑定団”なんかもやりましたね。鑑定士を呼んで実際に鑑定してもらうんです。結局、お宝は出ずだったんですが…数十万で購入したものなのに、数万程度の価値しかないものがザラにあって、皆さんショックを受けてました(笑)」

●それはショックでしょうね。本家の番組でも、思っていた価格より低くて死にそうになっている人良く居ますもんね。

辰巳さん「あと人気があったのが、“座って健康体操”というイベントです。ご高齢の方が多く、葬儀屋なのにデイケア施設のようになったのが印象的でしたね」

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素晴らしいイベントの数々、まるで葬儀屋さんとは思えない内容です。

死を扱う施設なのに、健康になろうという真逆のイベントをするということ、パラドックスを感じずにいられません。

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さてここで選手交代、再度植田さんにお話を伺います。

植田さん「うちのイベントって、ご高齢の方が多いのです。地域のコミュニティ会館のように利用される方も多く、どのイベントも和気あいあいとしますね」

●わかります。

植田さん「ここで友達になっていく方も多いんですよ。イベントで意気投合して、終了後にお茶しに行く方も良くお見かけします」

これは新しい、名付けるなら葬フレというやつでしょうか。コミュニケーションの場所として葬儀屋があるのです。私が想像していたのと全く違う世界でした。

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▲自分の顔写真が入ったときのことを想像してしまいますね

●イベントを始めたきっかけってありますか?

植田さん「葬儀場というのは、地域の人に知っていただくことが難しい業種なのです。式場を構えていても、あんな所に葬儀場なんてあったっけ〜?という印象を持たれることが多いのです」

●確かに。もし自分の身内に不幸があったとしたら、何処にある葬儀場に連絡したらいいか、今わかっていません。

植田さん「興味を持ってもらえるようなイベントを開催することで、まずは知ってもらうということが大切だと考えています。ここ伊丹式場では何度かイベントを開催していますが、実際にイベントに来ていただいた方々からご用命を承ることが非常に多いのです」

なるほど。普段の生活において、葬儀場というものに馴染みがある方というのはそう多くはないでしょう。認知してもらうことが大事というのは、どんな業種にも当てはまることですね。

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●なにか苦労話みたいなものってありますか?

植田さん「やはりイベントに人が来ないことがあるというのは辛いですね。同じ阪神間であっても、イベントがウケるウケないというのは地域差があるんです。試行錯誤しながら頑張っています」

●普通の葬儀屋さんの悩みじゃないような感じですね…。

植田さん「最近もっぱらの悩みは、次にどんなイベントをしようかということです。各エリア内で意見を出し合って決めるのですが、毎回大変なんですよ…ネタが無くて…」

葬儀屋なのに、イベンターが抱えるのと同じような悩みを持っているのですね。

もし何か思いついたら、千の風さんにアイデアを伝えると面白い化学反応が起こるかもしれません。

打ち解けて来たので気になっていたあの疑問を

●もし差し支えなければ、千の風という名前の由来を教えていただけませんでしょうか?

辰巳さん「あーーー…うーん。どうなんでしょうね…私の口からはハッキリとは言えないのですけどね…植田課長、どうなんですかね?」

植田さん「いやー、うん。詳しくは知らないけど。やっぱり“アレ”なんじゃないかなぁ(笑)」

●わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

私のアレの前でアレしないでください〜〜〜!!!

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▲アレ

植田さん「しかも、“千の風”で商標登録しているので、他の葬儀屋さんは使えないんですよ。我が社ながらちゃっかりしてますよね」

●それはまた、しっかりしてますね…

他社さん、泣かないでください〜〜って感じですね。

そしてイベントが始まる

そうこうしている間に、葬儀場に人が続々と集まってきました。平日の午前中という時間帯なのに、満員御礼です。

どうやら地元の方が多いようです。常連さんもチラホラ居るようで、皆さんにこやかに世間話をされています。

葬儀屋のフラワーアレンジメントということで菊とか蓮とか曼珠沙華とかばっかりだと思ってましたが、花は一般的に良く好まれているのもの。カーネーションにカスミソウに、美しく可憐な花ばかりです。

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さて、ワークショップが始まりました。見ているだけでも良いかと思っていましたが、折角なので私も参加することにします。

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まずは赤いカーネーションの花を手で広げます。

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そして、大きな三角形になるように挿していきます。

と、口で言うのは簡単ですが、角度や長さ調節が絶妙に難しい。

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初めて体験する私が手こずっていると、横にいたマダムAがアドバイスをしてくれました。

マダムA「そこはもうちょっと左に寄せるといいんじゃないかしら」

マダムA「今日の為に、假屋崎省吾さんのテレビを見てきたのウフフ」

マダムA「若い頃一度だけお花をやってね…娘が居てね…テニスし過ぎて肩が上がらなくてね…」

マダムAの止まらない話に相づちを打ちながら、ぷつりぷつりと花を挿します。

あ、どうしよう。結構、楽しい。

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周りを見回すと、スタッフが声をかけて回っているようです。

スタッフ「オリジナリティがあっていいですね〜」

スタッフ「お上手ですね〜」

マダムB「アラヤダ!まー嬉しい!!」

褒められて頬を赤らめるマダムB、キャッキャとはしゃぐ姿はまるで少女のようです。

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なんだろう、なんなんだろう、この緩くて幸せな空間は?

……ふと今自分が何処に居るか分からなくなりましたが、視線を上げると厳かな祭壇セットが飛び込んできます。そう、ここは確かに葬儀屋さんなのでした。

あっという間に完成!出来上がったのがこちら。

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▲持ち前の不器用さを発揮した私の作品

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▲假屋崎省吾ファンのマダムAの花は、さすが美しい。

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▲めちゃくちゃにぶっ刺していたマダムBは、私も撮って撮ってー!とテンション高い。パシャリ。

終活ポイントカード?

和気あいあいとしたイベントが終わると、立ち上がった皆さんが一列に並び始めました。

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なんだろう?と眺めていると、皆一堂に何かカードのようなものを手にしています。

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それは、ポイントカードでした。千の風の兵庫エリア限定のこちら、イベント参加ごとに一つハンコを押してくれるものです。そしてハンコ1個につき、なんと葬式代から一万円を割引してくれるという、超お得なサービスなんだそうです。

このお写真の方は常連さんで、毎回通っていたのでついにポイントカードがハンコでいっぱいに。ハンコ6個分なので、葬式代から6万円も割引が利くとのことです!ひゃっほ〜〜〜〜〜い!

なんてお得サービスなんでしょう。お得なんですが、お得なんですが……なんでしょうこれは。

凄く嬉しそうなご本人。言わば、死ぬ準備をしているのに、どうしてこんなに、楽しそうなんでしょう。


遺影撮影??

ポイントを貯めて満足そうなマダムたちが帰っていく中、葬儀場という異空間で行われていたイベントの余韻を噛み締めていると、チラチラこちらを眺めていたマダムCが駆け寄ってきました。

マダムC「あんた、カメラマンかいな!」

私が持っていた一眼レフを指さしながら言います。

マダムC「ちょうどええから写真撮ってぇな〜〜!
遺影に使うから〜〜〜!!」
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 ということで人生で初、遺影撮影をしました。遺影なんて撮ったことないのですが、こんな感じかな?バストアップで何枚かパシャパシャと撮ります。

 ※本当に遺影に使っていただくときのことを考え、そのままの写真のアップは控えさせていただきました

マダムC「いえ〜い。ありがとう、助かるわ〜〜〜!写真、絶対送ってな〜〜〜!」

いえ〜い、なんて言ってる場合じゃない。不謹慎ギャグだ!って炎上してしまうわ。

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▲マダムCの希望で、植田さんと一緒に撮影。

マダムCは、かなり植田さんを慕っているようすです。

でも、葬儀屋さんとお客さんというその関係性には、そう遠くない未来に「死」が待っているはずです。なのにどうしてこんなに、楽しそうなんでしょう。

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植田さん「こんな風に慕ってくれたり、イベントを楽しみにしてくれる人も結構いらっしゃいます。とてもありがたいことです。もちろん企業なので集客力のあるイベントをやっていきたいのはありますが、何かそれだけじゃない、人との繋がりの楽しみもあるのです」

植田さんは、嬉しそうにそう語ってくれました。

楽しく死ぬ

葬儀場は故人を見送る場所であり、必ずそこには人の死があります。

ですがそこに集まる人達は、死に対してポジティブであり、コミュニケーションの場として、遊び場として、葬儀場を利用していました。

これは、自分が持っていたイメージとは大きくかけ離れたものでした。

何故こんな独特の雰囲気なのだろうと考えていたのですが、それは、ここに来る方達が、いつか来る死を受け止めて歩いているからではないでしょうか。

死に抗うことなく死に向かっていくと、死までの道すら、楽しめるのかなぁなんて。

それでは。

各位、最期まで楽しく生きて、楽しく死にましょう。

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植田さん、辰巳さん、並びにご協力いただきました千の風の皆様、そしてマダムたち、ありがとうございました。

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