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「90歳近いオバチャンが一人でやっている、看板もメニューもない定食屋がある」
そんな情報をハイエナズクラブのみわメンバーに教えてもらい、是非訪問したくなり自分も行ってきた。
場所は大阪は北区の中崎町という街だ。梅田からすぐ近くで、住むにも便利そうだ。
レトロな街並みに目を惹かれる。といっても古いまま残っているというわけではなく、そうした建物には若い人がやっているお店(カフェや古着屋など)が入っているようだ。
昔からの街並みを残しつつ、若い人が活性化させるという取り組みも悪くないと思う。どこもかしこもチェーン店で溢れてしまってはつまらない。かといって昔のまま残しておいても朽ちていずれ消えゆくだけだ。
ところで、探しているそのお店の名前は【はまゆう】というらしい。しかし看板が無いと聞いているので、この情報はあまり意味を持たない。googleマップで目当ての建物を目指す。
……これか。
暖簾が出ていない(裏に引っ込めてあるのが透けて見える)ので流石に今は営業していないんじゃないか、と思い11時半くらいになるまで周辺で時間を潰して戻ってきたが、それでも様子に変化がない。
ただ、中の電気は点いているようなので誰かいるハズ。しかも実は別の日にも来て諦めて帰った経験もある。わざわざ東京から来ているのにもう諦められないと考え、取り敢えず入り口を開けてみた。
ガラッ
中には店主と思われるマダムと、お客さん?と思われるマダムが一人。二人で煙草を喫いながら談笑していた様子だった。
「あの〜 やってますか?」
と聞くと、「ああ、やってるよ!」とのお答え。やってるというよりは、やるやらないの区別があまりないという表現のほうが正しいかもしれない。
「じゃあワタシはこれで」と先客のマダムは立ち去った。
「追い出すようで申し訳ありません」と言うと、どうせ帰るところだったのヨとのこと。ただ、
席がこのようにふたつしかなく、更にテーブル上はモノがあったりして実質1席しか有効でないので、確かにマダムが帰ってくれるまでは順番待ちするしかない状況ではあった。お礼を言って着席する。
「アンチャン、初めてだっけ?」とマダム。ハイと答え、念のため
「食事、できるんですか?」と問うと、ああええよ、とマダムは答え、支度に入ってくれた。
その間にインテリアを鑑賞する。
「店内の私物の侵食度合いが高いほど、名店」というマイ法則からするとここも期待度は高い。
これも調味料や食材かと思ったら、だいたい酒とツマミのようだ。居酒屋ではないので、多分マダムの個人的なものだろう。
「アンチャン、ごはんがヒヤしか無かったわ、ヒヤでええ?」
とマダムに聞かれる。もう何でもいいですよ、と答えると、なんとレンジで冷や飯を暖めるサービス。
レンジをかけすぎて、冷や飯は通常の炊飯器で出せない領域の激アツ温度になった。
そして、出揃ったこの日の定食メニューがこちらである。
↓
いかがだろうか。色々と疑問を抱かれると思われるので、以下一品ずつ解説しよう。
まず、付け合わせのキュウリとミニトマト。今回、いちばん普通のメニューである。
次に山盛りのちりめんじゃこ。販売されている袋からその大半を出してくれたのだが、流石に食べきれないので……と少しだけ別皿に移してもらい、あとはお返しした。
こちらはらっきょう3つ。ナゾの小瓶(蓋をしてない)に浮かんでいたものから供してくれた。これがこのお店での在庫全てであったので、決してマダムがケチったわけではないというのは強調しておきたい。
そして缶詰モノのみかん。汁までご提供いただいた。このときに新たに缶詰から開けたわけではなく、この状態で保存していたものをそのまま出してくれた。
最後に、冷や飯と食べかけのオムライスである。炭水化物オン炭水化物(焼きそば定食など)は大阪らしさだと思っていたが、ご飯のオカズにご飯を食べるのは自分も初めてであった。
このオムライスは、マダム自らも半分食べた経験から「近所の喫茶店のやつなんだけどウマイから」と味をパワープッシュしてくれた。
他のブログなどを見ると、揚げ物や煮物なども出ることもあるようなので、この日はある意味でアタリであったかもしれない。
はまゆう日替わり定食を食しながら、マダムに話を聞いた。
マダムは名をハルコさんといい、噂通り90歳をゆうに越えているとのこと。タバコも酒もガンガン現役で、それらを悪とするちまたの健康法などどこ吹く風である。数年前に交通事故に遭ったが、それでもまだまだ動けるそうだ。
昔はもう少し大きい店をしていたが、年齢も重ねてそれほど動けなくなり、また経済情勢も変わったこともあって、今のこぢんまりしたお店が丁度良いとのこと。
看板やのれんもあるのだが、それらを出すのが面倒だし来る人は決まっているので最近は出していないそうだ。今後訪問してみたい人がいたら、看板やのれんが出ていなくても遠慮なく入り口を開けるべきだろう。
話しながら、完食。この中で一番美味しかったのはやはり食べかけのオムライスだった。オムライスはご飯のオカズになるという大きな学びを得たので皆様にもおすすめしたい。
ごちそうさまでした、と告げ、食器下げを手伝った。ハルコさんはお湯をヤカンで沸かしはじめていたので、お茶かコーヒーでも出るのかしら、と図々しい期待を抱いていると、「これ飲みや」と食後の一杯を出してくれた。
ただのお湯。
いや、白湯と言ったほうが正しいかもしれない。白湯も悪くないのである。ただ、コーヒーとか図々しい思いを持った自分がイケナイのである。
お湯を飲みながら話を更に聞く。約50年年中無休ということで、テレビや雑誌の取材も結構来るらしい。ハルコさんくらいになると、店をやるとかやらないという区別がほぼ無くなるようで、別に休みとか気にしたことはない、ただし体調が悪いときは休むと言っていた。
食後のお菓子も出してくれた。意外とふつうのお菓子も食べるようだ。こうしてタバコにしても酒にしても、カラダに悪そうなものも普通に採るのがかえって健康には良いのかもしれない。ただ、店をやって人と話すのが健康には良い、ともハルコさんは語った。
お湯を飲み干したのでお礼を言ってお支払い。
ちなみに定食はどんな内容でも一律で600円。好みのメニューになるかは運次第だが、自分はたいへん満足した。いやマジで。
「また来てや!」とサムズアップをするハルコさん。100歳まで余裕で生きそうなのでタイミングが合えばまた来たい。そのときは果たして定食として何が供されるのか、ドキドキワクワクである。
【店舗データ】
営業:年中無休(と仰るが、たぶん不定休)8時くらい〜13時くらい(テキトーだそう)
取材時期:2015年2月
参考ブログ:【大阪】中崎町 看板の無い定食屋「はまゆう」(TiN.)