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気が付くとサンリオのおたくになっていた。
年間パスポートを使ってサンリオピューロランドに通い、同じショーを何度も見て、何度も同じところで泣く。ショーを良い場所で見るためなら、何時間も床に座って並ぶ。
大好きなキャラクターにハグをしてもらうと、心が愛で満たされる。
特に私が愛してやまないキャラクターは、うさぎの女の子、マイメロディだ。
昨年末、ホームページ上でひっそりと彼女のバースデーライブの開催が告知された。
開催は2日間、合計500名がこのライブに参加することができる。
私は、全国に数万人はいるだろうマイメロファンを代表して、このプレミアチケットに当選した。
一生の運を使い果たしてしまったかもしれないが、構わない。
2019年1月18日金曜日。メロディのバースデー当日だ。
バースデーライブは夕方から、ピューロ内のシアターで行われる。
私は同じくピューロのおたくである友人と、朝からピューロにいた。
バースデーライブの前に、この日から始まるメロディのショー「いちご いちえ」があるのだ。まずはこれを見ておかなくてはならない。
いい位置で見るために2時間待機した。その前に「ミラクルギフトパレード」でも2時間程待機していたので少しつらかったが、メロディを真正面から見たい一心で待った。
降りてきたメロディは天使のよう、というか、天使そのものだった。
メロディから発散されるかわいいのビームが、私の額から後頭部に貫通して、一回死んだ。
「お父さんのいちご畑で実ったいちごが大好き」と語るメロディ。
メロディは田舎のいちご農家の娘なのだ。ロンドン生まれのハローキティがまとうシティ感と比べると、どこか素朴で親しみやすい雰囲気があるのはそのせいだろうか。これがメロディの最大の魅力だと私は思う。
ついにバースデーライブの時間になった。
ライブは全て撮影OKのため、集まった250人のマイメロファン達はカメラの準備に余念がない。
開演前にはスライドショーが流れ、その中にハローキティとのツーショット写真があった。
なんとなく緊張したように見えるツーショットに、上下関係がありそうな雰囲気を感じてしまうが、それは「みんな仲良く」のサンリオマインドに反することなので思い過ごしだろう。
満を持して、メロディが登場した。
目の前で、メロディが歌っている。もうそれだけで涙が出た。
ステージを降り、全ての通路を通ってくれるメロディ。
その澄んだ歌声に、私はこれまでについた嘘や、使った悪い言葉や、持っていたいじわるな心を恥じた。
応援にかけつけた友人のバッドばつ丸がメロディのマイクを壊してしまうハプニングがあり、会場はさらに盛り上がる。
マイクを隠すばつ丸と、何かあったの? と不思議そうなメロディ。
直接キャラクターとふれあうのもいいが、キャラクター同士のやりとりを見るのも楽しみ方のひとつだ。
フォトセッションの時間になった。
列ごとに召集され、集団でステージの上に登って写真を撮ることができるのだ。
メロディたちは色々な方向を向いてくれるので、全員が最低1枚は正面からの写真を撮れる。
音楽が流れ、曲が終わるまでが制限時間だ。
クイズ番組のシンキングタイムにかかるようなどうでもいい曲が流れるので今までのムードは台無しだったが、私はこの「ちょいちょい安っぽい感じ」がサンリオの大きな魅了だと感じている。
友人のクロミちゃんと談笑するメロディ。緊張感がなく、仲の良さを伺わせる。
フォトセッションの後、メロディは衣装替えのため退場した。
すると、MCの女性2名がこんなことを言い出した。
「マイメロちゃんに歌のプレゼントをしましょう!」
大賛成である。
スクリーンに表示されたそのど直球の歌詞に赤面した。
さらに、MCのお手本を聞いて我々は耳まで真っ赤になることとなる。
前半は普通のハッピーバースデーの歌なのだが、後半はただただ叫ぶだけなのだ。
250名のマイメロファンは、歌というか、叫ぶ練習を始めた。
メロディ!メロディ!マイメロディ!
大好きメロディ!マイメロディ!!
「声が小さいよ〜!」
メロディ!メロディ!マイメロディ!
大好きメロディ!マイメロディ〜〜〜〜!!
恥ずかしいが、このセリフに同意できない者はここにはいない。
皆で力いっぱい叫び、剛速球の愛をメロディにぶつけた。
受け取ったメロディは、泣いた。
「マイメロ……感激……」
メロディの一人称が「マイメロ」だということに若干驚いたが、私たちの気持ちがメロディに届いた事が、本当に嬉しかった。
メロディはお礼のバラードを歌ってくれた。
”一人きりじゃ 生きられない
悲しいこともあるけど そばにいてほしい
ありがとう”
こんな歌詞だった。
メロディにも悲しいことがあるのだ。
実家が農家だから、収入は天候に左右されるだろう。
時にはショーに出るのが嫌になる事があるかもしれない。
私にも辛いことがある。
大事に育てている木が枯れてきたり、勤務先の歯医者で先輩に嫌味を言われたりするのだ。
私達は、ひとりきりじゃ生きられない。
人と助け合って、感謝しあって、初めて生きていける。
大好きなメロディ。いつも私の心のすぐそばにいてくれて、ありがとう……。
座席で静かに涙を流していると、MCの大きな声が響いた。
「マイメロディちゃん!私を見て!信じて!感じて!ジェスチャーゲーム!」
唐突にゲームが始まった。
スクリーンに映る5つのお題を客席からジェスチャーでメロディに伝えるというもの。
クリアしたお題の数が多いほど、最後の抽選会での当選者数が増えるというのだから、全力である。涙も引っ込んだ。
なぜかお題が「うがい」「くしゃみ」「手洗い」「せき」「マスク」と、感染症防止講座のようだった。
一斉にゲホゲホと咳き込みだす観客席。
私も手をこすり合わせ、必死に手洗いのジェスチャーをした。
メロディの直筆の文字。
メロディはテンポ良く全問正解し、出来レースゲームはすぐに終わった。
ちなみに、抽選会は当選した。
賞品のキーホルダー。
正確に言うと、友人が当選し、それを貰った。
「一番の推しはシナモンだから譲る」とのことだった。
持つべきものはシナモン推しの友である。
とうとう、あと3曲でライブが終了だと告げられた。
「曲は、”あたらしいいちにち”、”しあわせの花”、”Lucky Happy Everyday”です!」
MCから発表されると、会場が涌いた。
神セトリだ……。わたしも思わず声が出た。
”しあわせの花”は、四季の花々について歌った私も大好きなメロディのソロナンバーだ。
そして、”Lucky Happy Everyday”は、ピューロ史上最大と言って良い程のアッパーなキラーチューン。会場の盛り上がりは最高潮となった。
例えるなら、サザンが最後に「勝手にシンドバッド」をやるような感じだろうか。
振り付けがあるので、写真を撮るのも忘れてメロディと一緒に踊った。
こうしてバースデーライブは閉幕した。
人生で、こんなに幸せな日はあっただろうか。今日一日を噛みしめていると、MCから驚きのアナウンスがあった。
「お帰りの際に、マイメロちゃんからお一人お一人におみやげのお渡しがありま〜す!」
幸せはまだ続く。
出口にメロディがいた。
私は「お誕生日おめでとう、楽しかった、ありがとう、またね」と、メロディに伝えると、メロディはぴょんぴょんと体を動かし、喜びを表現してくれた。
こうして、人生最高の一日が終わった。
メロディ!メロディ!マイメロディ!
大好きメロディ!マイメロディ!
この気持ちをいつも胸に抱いて、私は生きていく。
メロディに直接もらったおみやげのポストカード。死んだら棺に入れてくれ。