特別セミナー『定食屋の窓際メニューを頼もう』

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zukkini
ぼくはワンマン、まわりはイエスマン、ペットフードはドギーマンという感じで、我欲にまみれてダメになっていく組織を体現したいと思っております。

飲食店において、一応存在はするけど誰も触れようとしないメニューを「窓際メニュー」と呼ぶことにした。

「食べたくないから頼まない」から始まりついには「誰も頼まないから、頼むと恥ずかしい・・・」にまでこじらせてしまったメニューのことだ。

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メニューがたくさんある定食屋や中華料理屋でも実際にはよく注文されるのはそのうちの半分ぐらいではないだろうか。

さらに言えば「日替わりランチ」を設定しているお店であればその傾向は強くなり、メニューの大半が有名無実化しているというケースもかなりあるはずである。

日替わりランチは安いし、バラエティ豊か、さらに早く出てくるというメリットがあり、一番はそうしたメリットにかんがみて注文時に悩むことが無いという部分がある。

常連の多い、まだ不慣れな定食屋の場合、ここに「店の空気を読む」という要素が加わってきて、周囲に何となく歩調を合わせてしまいたい、変なものを頼んで目立ちたくない、という事象もあると考えている。

過去に自分のブログで空気も読まずにカレーを頼む常連について言及したが、本来メニューに謳ってある以上はそれを堂々と頼む、それでよいわけである。

今回やってきたのは高円寺の味楽。高円寺南口の老舗中華料理屋として根強いファンがいるこのお店、昼のランチ、夜でもランチ、もはや谷でもランチ的な一日中やっている「ランチ」という、おもに揚げ物を奉った大盛り定食が人気の店だ。

ハイエナズクラブ会員の、高円寺在住・イシイ君から「味楽に誰も頼まない『おでん定食』があるんですよね」という話を聞いたとき、「そういえば」とメニュー表には載ってないのに、なぜか店内には札が掲げられている「おでん定食」という奇妙な存在を思い出した。

「イシイ君、キミはおでん定食を食べなさい」

そのときすでに夕食を済ませていた我々、嫌がるイシイ君を連れて味楽に入店した。

これが味楽のグランドメニュー。麺の部、スープの部、お丼の部・・・・大企業並みに部署が分かれており、さらにそこから小さく課が分かれているようだ。550、450というのは内線だろうか。とにかくこれが味楽の組織図である。(赤字のメニューの意味は原価割れ?頼みすぎると味楽がつぶれちゃうかもしれないから要注意!)

味楽はご主人と奥さんの二人できりもりする小さなお店、さらに奥さんは料理に全く参加しないので(常連からは「ディフェンダー」と呼ばれている)ご主人が一人でこれらを全て作っているのである。

「一日に1回、いや月に1回出るか出ないか分からないメニューなんて覚えてられるのだろうか・・・」

お仕事の邪魔をするのは心苦しいが、我々の目的は果たさねばならない。

おでん定食が確認できるのは店内の札でのみ。

「お丼の部」にも、「スープの部」にも入っておらず、さらに味楽の中では「庶務部」的な位置づけであるはずの「料理の部」にすら入っていない味楽の窓際族、それが「おでん定食」。

名前からして実に珍妙、実に冴えない。これぞ窓際メニューを呼ぶにふさわしいのではないだろうか。

イシイ君が「おでん定食」と、そっと告げると、意外にも注文を受けた奥さんは動じることなく、それをご主人に伝えた。

店内にご主人によって復唱された「おでん定食」というフレーズが響く。周りの客はみな「ランチ」を頼んださまよえる羊達だ。「そんな勇気あるメニューを?」という羨望のまなざしが痛いぜ・・・!

もうしわけ程度のチャレンジではあるが、俺も味楽ではもはや俺ぐらいしか頼まないと自負している「カツラーメン」を注文した。

ラーメンの上にチキンカツが乗っているだけで、味の調和は皆無。ソースをつけて食いたいからはっきりって別々の器にしてほしい。

なぜこんなことをしたのか、ご主人の気持ちを理解するために俺は過去に5回以上、このカツラーメンを食っている。食べるたびに特に新しい発見もなく、ご主人の心の奥底に潜む闇の部分はますます深くなるばかり。

この世には分からないことがまだまだ多い。

そしておでん定食の登場。

注文した後にイシイ君は見たのだという。

「奥さんが2階に、おでんの素もって上がっていきましたね」

2階にあるおでん専用特設ルームで作られるというスペシャル感と、あとは守備専門の奥さんが料理に参加したというプレミア感。味楽でここまでやってくれるのはおでん定食しかない。感謝の言葉しか今は無い。

そしておでんに合わせるのは・・・・・ごはんと味噌汁!

汁と汁の豪華競演、汁男優による汁権利の行使である。

「味噌汁はいらないですね・・・」

涙ながらにそうイシイ君は訴える。とりあえず二人とも満腹であったが、イシイ君には我慢して食べてもらった。

「味は?」と聞くと「まあまあすね」と、満腹な中にもまだまだ味を楽しむ余裕があったみたいだから俺はカツを半分食べてもらった。

どうだろう、窓際メニュー。みなさんも行きつけの定食屋で毎日同じものを食べる日々から抜け出し、ちょっとの勇気で新しい世界を見てはどうだろうか。

人気の無いメニューが淘汰されないのは街の定食屋のよいところ。それを利用しない手はない。

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ハイエナズクラブでは窓際メニューを引き続き追跡すると共に、空気を読まずにどんなところでもカレーを頼んでくれる方を大募集しております!

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